こんにちは、あんこです。
これからNICUへ行く学生なら知っておくべきことがあります。それは「ディベロップメンタルケア」
横文字だらけで頭に入らないのはわかりますが、この言葉の意味を知って実習現場に入るのと知らないでいるのは結構学びに違いが出ます。ここで見ていってくださ~い。
ディベロップメンタルケアとは?
「早産児やハイリスク児に行う、発育・発達を阻害する因子を取り除き、過剰な刺激から保護し、神経行動学的発達を促すケアのこと」を出ディベロップメンタルケアといいます。
言葉が難しいようなのでもう少し砕くと「NICUの環境を、新生児の立場から考えたもので、できるだけ母体に近づける環境つくり」のことです。
必要性
新生児医療の進歩によって、NICUで医療を受けた新生児の救命率が大きく向上しました。しかし、その一方で神経行動学的な面での長期予後についての問題が浮上したのです。そこで、NICUでの医療提供の看護の在り方が見直されてきました。
「神経行動学的とは・・感情、行動、学習に及ぼす脳の影響に関係する」の意味。
引用元:weblio辞書
目的
NICUに入院する児の後遺症なき生存
早産・低出生体重児では、早産の改善、 出生後の栄養状態の改善、疾患発生の予防や軽減、治療環境の改善など、正期産児では新生児心肺蘇 生法の普及、脳低体温療法などが積極的に行われてきてます。
ディベロップメンタルケアはそれらの治療をサポートするものでもあり、時にその枠を超え成長・発達を促すケアでもあります。
早産児は NICU の音や光,体性感覚の過剰な感覚刺激にさらされ,調整系の刺激は欠如している。
これらは発達過程にある脳に有害な影響を与え,発達を変更する。NICU の環境が発達途上の神経系が期待するものとは驚くほど不釣合いなものであることを認識し,個々の児の神経機能を捉え,有害な影響を少なくし,脳の発達を守り,育むケアを考えなければならない。
長期入院児は重度障害児が多いため、発達を改善するためのケアより、児のQOL を高め、在宅移行につながるケアを導入する必要があります。
ディベロップメンタルケアも可能な範囲で行い、児の生理的な安定や親の愛着形成を促し病棟では保育士やチャイルドスペシャリストのような、児のQOL や遊びを大切にする専門家がかかわることも望まれています。
対象
NICU に入院するほぼ全ての児です。
なかでも早産・低出生体重児では神経系疾患発生、出生後の低栄養、治療環境からのストレスなど多様な要因により発達障害が発生する可能性が高いです。
正期産児でも、染色体・先天異常系疾患や低酸素性虚血性脳症により重症心身障害を発生する児が多く認めらています。
■神経系疾患
・新生児仮死(低酸素性虚血性脳症:HIE)
・脳室周囲白質軟化症(PVL)
・脳室内出血(IVH)
・水頭症
・高ビリルビン血症(ビリルビン脳症後遺症)
・脊髄髄膜瘤
■染色体・先天異常系疾患
・18トリソミー
・21トリソミー(ダウン症候群)
・口唇裂、口蓋裂
■呼吸・循環器系疾患
・慢性肺疾患(CLD)
・胎便吸引症候群(MAS)
・無気肺、肺炎(先天性心疾患術後など)
■早産・低出生体重児
効果
ディベロップメンタルケアによる、乳児期の神経行動発達の改善や、幼児・学童期の発達検査・知能検査の改善などの報告は多くなってきているものの、NICU に入院する児の発達を促進する効果についてはまだ明確ではないようです。
統計が取りにくいこともあるのかと思います。
しかし、ディベロップメンタルケアがNICU に入院する児の「後遺症なき生存」に貢献するものか確かでは無いが、児の病態やケアの内容からすれば当たり前に行われていて良いものであると考えて良いのです。
ディベロップメンタルケアが、早産児の後遺症なき生存をより後押しするものに位置づけられるために、医療者はより良いケアの提供を続けるべきです。
それでは、具体的な方法を見てみましょう。
今から実習に行く看護学生、そしてNICU入院中の児を持つご両親にも役立つと思います。
方法
➀音環境
- 聴覚機能の完成 …在胎26週頃といわれている
- 新生児にとって心地よくない音(モニター類の医療機器の持続的、突発的な音・モーター音・医療者の会話)
- 新生児の睡眠や覚醒レベルに大きく影響を与え、聴覚障害を引き起こす可能性も考えられる
看護のポイント
- モニターの同期音は消し、アラームレベルを可能な限り下げる
- 保育器の上に直接物を置かない
- 保育器の窓の開閉は手を添えて行う
- 保育器の収納扉や引き出しの開閉は最後まで手を添えて行う
- 保育器内にセットしている用手換気用の酵素は作動状態のままにしない
- 通常の会話、咳、足音などの音の発生はできる限り抑える。
②光・臭刺激
- 早産児の眼瞼は薄い:在胎32週未満では光刺激に対する調整がうまくできない
- 継続的に強い光にさらされることによる睡眠障害
- 照度を落とすことで、呼吸や循環動態が安定して睡眠が増し、体重が増加したという報告がある
- NICU内では治療やケアのためにある程度の照度は必要だが、新生児の発達面を考えると、昼夜の区別をつけたり、照度を減少させたりすることが重要
看護のポイント
- 室内全体の照度を調節する
- 照明の真下に保育器を設置しない
- 新生児個々に保育器カバーを活用する
- 間接照明を利用する
日中は、100-200lux、夜間は、50lux。
・NICU側:証明を落とし、1日を通して暗く個別に光源を調整する
・GCU側:昼夜の区別を付ける。夜間22時以降は消灯する(家に帰る準備にもなる)
③看護ケアパターンの調整
- 新生児の状態や状況に応じた看護ケアや治療処置など、それぞれの新生児のニーズに合わせたケアの方法を選択し、侵襲が少なくなるように工夫する
- そのためには神経学的および行動学的発達の知識が必要
- いつ、何を、どのように行うべきかを判断しケアのタイミングを考慮する
- NICUにいる新生児は、必要な治療や処置とはいえ、心地よいとはいえない刺激である
- 新生児にとって好ましくない刺激は、できる限り頻度を少なく、また侵襲を少なくする
- 医療者の都合で新生児に関わると、新生児を過激に刺激しストレスを増大させ、発達を阻害する
看護のポイント
- ケアを行うタイミングは深睡眠を避ける
- ケアをある程度まとめて行い、睡眠や安静を中断させないように配慮
- あらかじめルーチンとして決められていることもあるが、時間をきっちり決めて、手順に従ってケアを行うのではなく、今それが必要であると判断したときに行うようにする
- 新生児には突然触れるのではなく、優しく声かけをし、看護者の手が冷たいときは温めてから触れるようにする
④痛みの緩和ケア
- 新生児でも、啼泣したり顔をしかめたり痛みを感じている
- NICUにいる期間は日常的に採血や侵襲を伴う処置が行われている
- それらの痛み刺激をできる限り緩和することを実践しなければならない
看護のポイント
- 血管の穿刺回数を少なくするために、まとめて採血する
- 血管の穿刺回数を少なくするために、動静脈ルートを確保する
- 重症児の血管確保は、エキスパートレベルのスタッフのみが行う
- 可能な限り、侵襲の少ないモニター機器を使用する
- テープの使用は最小範囲とする
- テープの除去は、粘着力をゆるくしてから行う
- 侵襲のある処置(眼底検査など)には前与薬を適切に実施する
⑤ポジショニング
- 胎内環境に近い屈曲姿勢を保持する
- 胎内では屈曲姿勢だが、出生後は重力の影響を受けて身体は平坦になる
- 自己鎮静行動が促され、ストレスの緩和や安静保持につながる
- 正産期の新生児の場合は出生後も屈曲姿勢をとれるが、早産児の場合は、神経系の発達が未熟で筋緊張が弱いため、屈曲姿勢をとることが困難である。したがって、神経系の発達が未熟な新生児には適切で快適な姿勢になるように支援しなければならない。
看護のポイント
- 良肢位を保持し、新生児が胎内環境に近い屈曲・正中位の姿勢を保てるように支援
- 囲い込み(nesting:鳥が巣の中に囲い込まれているような姿勢)
- 包み込み(swaddling:新生児をぐるぐると巻いて包み込む姿勢)
★タオルやシーツ、砂のうを使って、手足が曲がり口の近くに手が行くようなまるまった姿勢をとりやすいようにサポートする。ガーゼやタオルを掛けて赤ちゃんを包み込む。
⑤カンガルーケア
- 絶対安静・保護期を過ぎた32週より実施
- 児の呼吸・循環状態が安定していることを確認して両親の同意のもとに実施
●赤ちゃんへの効果
・無呼吸が減り、酸素化がよくなり呼吸が落ち着く。(縦抱きにすることで呼吸が楽になる)
・肌と肌を通して皮膚の常在菌の交換が行われる。
●母親(父親)への効果
・肌と肌の触れ合いにより、眼と眼を合わせる、声かけ、親や子の匂いを感じ、お互いに相手の反応・愛情を感じあい母子(父子)相互作用を高める。
・母乳育児がすすむ。
さいごに
私たち看護学生・医療者は、新生児の発育・発達を阻害する因子を取り除き保護する役目として、治療や看護を提供します。
そして、新生児の発育を促進し、より高い機能レベルに達するようにケアを提供することが大切です。
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