RSウイルスとは
RSウイルスは、パラミクソウイルス科に属するRNAウイルスの一種。
環境中では比較的弱いウイルスで、凍結からの融解、55°C以上の加熱、界面活性剤エーテル (化学)次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系消毒薬などで速やかに不活化される。https://ja.wikipedia.org/wiki/RS ウィキペディア
rsウイルス感染症は、2歳までにほぼ全員が感染するといわれています。大人に感染すると、軽い風邪のような症状なのが特徴。ただ6ヶ月未満の乳児や肺に基礎疾患がある子、低体重で出生した児に感染すると重篤化するといわれています。
私の勤める病院では、小児の入院の半数以上をrsウイルス感染症が占めることもあり、感染しやすいウイルスなのでは?と私は思っております。次に感染経路。
RSウイルスの感染経路
鼻水や唾液、手を介して感染します。特に家庭内においてうつりやすいことが知られています。ウイルスが付着した箸やタオル、おもちゃやドアノブなどを介してRSウイルスは広がります。
https://medicalnote.jp/diseases/RS MedicalNote
RSウイルス感染症の症状
ウイルスに感染してから症状が出現するまでの潜伏期間は約4日間です。感染の初期には、鼻水やのどの痛みがみられ、その1〜3日後に咳がでるようになります。成人や学童期の子どもであれば、これらの症状は数日の経過で「風邪」として治癒します。
https://medicalnote.jp/diseases/RS MedicalNote
風邪症状が続いたあと、呼吸するたびにゼィゼィ(喘鳴)という音が聞こえたり、肋骨の間がペコペコ凹むような呼吸になると「細気管支炎」といって細い気管にまで病変がきてるということもあります。
乳幼児は細気管支の直径が小さいため重症になることもしばしばあります。その場合は、入院が必要になります。場合によっては、酸素飽和度が低かったり、呼吸困難感が強いと酸素・加湿・人工呼吸器をつけたりすることもあります。
また一度かかると、次風邪を引いたときにもゼイゼイ(喘鳴)しやすいことが分かっています。
大人の場合は風邪症状で終わることから、知らない間に赤ちゃんにrsウイルスを感染させてしまうことがあるので常に「せきエチケット」を心がけることが大切です。
特効薬は無い
rsウイルス感染症で入院してくる子どものご両親に、「薬は使わないんですか?」とよく質問されます。
rsウイルスに効果のある抗ウイルス薬は残念ながらありません。
点滴で水分を補い、こまめに鼻水・痰を吸引することが治療になっています。
「鼻水をとるのがかわいそう。」と吸引を拒む両親もいますが、自分で鼻水が出せない子ども達なので、そのままにしておくと中耳炎になるリスクが高まります。
中耳炎になると、抗生剤を開始しますが、耳は痛いし、入院は長引くので、どっちがかわいそうなのかって話になっちゃいます。
看護師が鼻水を取るのは、正直言ってかわいそうです。私も娘が小さいときには耳鼻科で吸引を嫌がる娘をみていましたから。でもほっとくわけにもいかない。
だったら、市販の鼻水取り機で取るなり、ご家庭でも何ができるか工夫してほしいと思っています。
看護過程
アセスメント
【呼吸に関して】
RSウイルス感染よって、細気管支腔の狭小化がおこります。更に、末梢気道部分が狭いので、肺に吸い込んだ空気を十分に吐けない状態が出現し閉塞性の呼吸障害を伴う可能性があります。
肺音は異常肺音が聴取でき(例えば断続性ラ音とか)、気道の狭窄・痰の貯留が考えられます。
乳幼児であるため呼吸苦があっても訴えることができず、看護者の注意深い観察が必要です。また、新生児では突然死の原因にもなる無呼吸につながることもあるので要注意。
痰を自己で出すことができないので、できるだけ痰を出しやすくすることを考慮し、ムコダインなどの去痰薬が処方されていることもあります。適宜、吸入・吸引を実施していく必要があります。
【体温に関して】
ウイルスや細菌といった病原体が侵入すると、白血球やマクロファージなどの細胞が攻撃します。そのためには体温を上昇させて病原体の繁殖を抑え、免疫機能を高める必要があります。
新生児でまだ免疫機能が成熟していない、体温調整機能が未熟なため周りの環境に影響されやすいこともあり、抹消冷感の有無や環境を整える必要があります。
感染による発熱なのか、着込みによる発熱なのかを見極めていく必要があります。また生後3~6ヶ月未満では、肝機能が未熟のため解熱剤は使用しないこともあります。その場合は、クーリングで対応します。
【水分・食事に関して】
点滴をしている場合は、よほどなことが無い限り脱水にはなりませんが、ゼィゼィして苦しくてミルクが全然飲めない場合や、咳がひどくて咳き込み嘔吐がある場合には必ずアセスメントします。必要水分量はどのくらいで、持続点滴の量は。
完全母乳の場合だと、母乳の飲みが悪いとおっぱいが硬く張ってしまうこともあるので、搾乳したりするこもおすすめ。
小児の1日の必要水分量は体重によってかわります。以下は計算式。
乳幼児(150ml×体重㎏)
幼児(100ml×体重kg)
学童(60ml×体重㎏)
持続点滴の量と、母乳・ミルクを含む水分をどの位飲んでいるか。小児は大人に比べて脱水になりやすいため、哺乳量や哺乳欲求と合わせて把握していきます。
看護問題
#1、初期感染、乳幼児により呼吸器症状重症化
#2、児の症状による母の不安
#3、退院後、再感染のリスク
優先順位
乳幼児であることと初期感染であることからRSウイルスが重篤化しやすいことが考えられる。無呼吸出現は乳児突然死なのど要因でもあるため一番生命危機に近いため[#1]を優先順位1番とします。
そして、乳児が入院すると家族の存在は大きい。児の状態がよくなるまで入院生活が続くことを考えると、母親は児の付き添いで入院生活・活動制限・児の病状を心配するが、それがストレスとなることも考えられる。
よって少しずつ母親の不安を取り除くことが母親のストレスの減少につながる。
現在の状況では、母親のサポートが必要不可欠なので[#2]を2番とした。rsウイルスは何度でも感染するウイルスであることから[#3]は退院後を見据えた関わりとし問題にあげた。
看護目標と計画
#1、初期感染、乳幼児により呼吸器症状重症化
長期目標:①酸素飽和度を目標値以上保つ
短期目標:①吸入・吸引によって痰の貯留が軽減する、②点滴・投薬が確実に行われる、③重篤症状を早期に発見する
O-P
・バイタルサイン(心拍数、R、T、SAT)
・呼吸状態(努力呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸、呼気の延長、喘鳴の有無)
・肺音の聴取(聴診部位によってどんな音が聞こえるか)
・鼻汁の有無、チアノーゼの有無(顔色、口唇色、爪床色)
・内服薬の有無
・吸入、吸引実施前後の肺音の聴取とSATの変化
・活気、機嫌、
・重篤な症状(無呼吸・無咳頭痛・下痢・嘔吐・けいれん・ひきつけ・脱力や手足の麻痺・呼吸困難・奇声や異常な興奮・意識障害)
T-P
・いつもと違うことや気になることがあれば声をかけるよう伝える
・バイタルサイン測定
E-P
・母親へ、RSウイスルについて説明する
#2、児の症状による母の不安
長期目標:①母親の不安が軽減される
短期目標:①思いを表出できる、②睡眠、休息時間を確保することがで きる
O-P
・母親の不安の言動・行動
・児の疾患理解度
・母親の睡眠状況、熟睡感の有無
・他兄弟や家庭状況の把握
・児に対する援助内容
T-P
・母の休息時間確保
E-P
・母親の不安にあわせた援助
#3、退院後、再感染のリスク
長期目標:①退院後の感染予防策について考えることができる
短期目標:①感染予防策を知る
O-P
・生活環境
・感染という概念の理解度
T-P
・児の症状が落ち着いたときや母の不安が少ないときに行う
E-P
・RSウイルス感染症について説明する
さいごに
看護学生のときに生後20日のRSウイルスに感染した赤ちゃんを受け持ちました。突然死リスクもあることを知り、母親は不安の毎日を過ごし涙を流していたことを今でも思い出します。
最近ではRSウイルス感染はかなり増えています。大人のせきエチケットと、手洗いうがいの感染予防をしっかり。あとは3ヶ月未満の赤ちゃんはなるべく人ごみに連れ出さないことが大切かなと思います。
不必要な病院受診も新たな感染になる確率も増えるので要注意。
過去に迷わず受診する症状を記事にしましたので参考にどうぞ。→迷わず受診するべき子ども症状
では、実習が無事に終わることを祈ってます★最後までお読みいただきありがとうございました。