細気管支炎とは
細気管支炎[読み:さいきかんしえん]
細気管支炎とは、気管支の細い部分が炎症を起こした疾患です。
粘膜上皮損傷、炎症細胞浸潤、間質浮腫、粘液分泌増加による細気管支腔の狭小化がおこり(気流抵抗の増大)、末梢気道でエアトラッピング(末梢気道が狭くて、肺に吸い込んだ空気を十分に吐けない状態)などにより、閉塞性の呼吸障害になるのです。
閉塞性の呼吸障害の結果、低酸素血症にもなります。
さらに空気抵抗が増すと、呼吸困難・頻呼吸・換気量低下が起こり、重症例では高炭酸ガス血症がみられるこをもしばしば。また、乳幼児は細気管支の直径が小さいので重症になります。
細気管支炎は、冬と早春に最も多く発生。2 歳以下の小児がかかりやすいが、1 歳未満の児が 80%以上を占めています。死亡率は基礎疾患の存在によって変わり、死亡率はRSウイルス感染がある場合がより高くなっています。
原因
アレルギー反応によって引き起こされることもありますが、主な原因はウイルスです。
割合は、RSウイルス60~80%を占め、ヒトメタニューモウイルス 、アデノウイス,インフルエンザウイルスなどがあります。
RSウイルス感染症についてはこちらです
気管支炎はうつる?
炎症そのものはうつりません。しかし、気管支炎はかぜのウイルスが原因のものが多く、くしゃみやせき、鼻水などを介した飛まつ感染で、風邪や気管支炎の症状を引き起こすこともあります。
つまり、炎症はうつりませんが、炎症の元となるウイルスや菌はうつる可能性はあるということ。
症状
・上気道の感染症状の鼻汁、鼻閉、くしゃみが2~6日続き、7~14日で回復していきます。
・努力呼吸、頻呼吸、鼻翼呼吸、急性の呼気性喘鳴、哺乳困難や食欲低下、頻発する激しい発作性の咳嗽、チアノーゼ(無い場合もある)、聴取・触知できるラ音、倦怠感、粘稠分泌物増加
・急性期に合併しやすいのは、無気肺、無呼吸)、呼吸不全
検査・治療
検査
1.血液検査:白血球数(正常または軽度上昇する)
2.胸部Ⅹ線・CT:気管支の炎症の程度把握(Ⅹ線だと過膨張所見・横隔膜の下降・肺門陰影、CTだと過膨張所見・小葉中心性の陰影が典型的)
3.ウイルス診断
4.動脈血ガス値:ガス交換の程度
治療
細気管支炎の治療は原因により異なります。
原因のほとんどがウイルスであるため特効薬はなく、治療の基本は全身状態の管理を中心とした対症療法となります。
治療法は、薬剤治療(気管支拡張薬の吸入)、低酸素血症を示している場合は酸素投与、水分の供給。
低酸素血症や二酸化炭素貯留が進行している場合には、人工呼吸器管理が行われることもあります。気管支の炎症による呼吸困難を防ぐため、酸素の管理を行う。
また、ウイルスや菌に対する対処方法として、抗ウイルス薬や抗菌薬が治療に用いられることもあります。マイコプラズマにはマクロライド系の抗生物質を用いながら、必要に応じた対症療法を行います。
罹患中は注意深く経過観察が必要で、二次性の細菌感染による肺炎、中耳炎が判明した際には抗菌薬を開始していきます。
看護過程
看護問題
#1呼吸状態が悪化する可能性
#2患児の活動制限
#3母親の不安
アセスメントと優先順位
全身状態の管理をするうえで重要なのは、呼吸状態の変化や呼吸困難の増強の徴候です。
呼吸状態を悪化させないこと、治療を確実に行っていくことが重要だと考え#1を優先順位1番とする。
入院という新しい環境、治療や検査、呼吸困難症状に伴う苦痛から、恐怖や不安を軽減する必要があると考え看護問題#2立案した。
さらに、入院した子どもの母親。家族は、少なからず患児の苦しそうな様子に不安を抱いている。そのため、主な付き添い者の様子を観察し、医療者側にからできる配慮・言葉をかけていく必要がある。加えて、疾患について説明し家族が理解を深め、治療やケアに対しての不安が軽減できるような援助が必要だと考え#3を立案した。
看護目標と計画
#1呼吸状態が悪化する可能性
長期目標①呼吸が楽になり、ガス交換が改善する。
短期目標①吸引によって痰の貯留が減る。②喘鳴・陥没呼吸がみられない。③正常な呼吸音が聴取できる。④大気化で酸素飽和度が目標値以上を維持できる。
O-P
1バイタルサイン(心拍数、R、T、BP、SP0₂)
2呼吸状態
・努力呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸、呼気の延長、浅表・促拍呼吸の有無
・肺音:副雑音(水疱音、捻髪音、笛声音、いびき音)
・喘鳴の有無
・多呼吸・喀痰、鼻汁の有無とその量
3チアノーゼの有無(顔色、口唇色、爪床色)
4抹消冷感、体熱感の有無
5活気、機嫌
6咳嗽と咳嗽時の嘔吐の有無
7食事量、水分摂取量
7検査データ(血液ガス分析、胸部Ⅹ線)
8服薬
9処置内容(吸入・吸引・酸素投与)
T-P
1点滴管理、指示された薬剤が6Rに従って与薬されているか
2処置ケアは、丁寧かつ手早く行い児の安静を保つ。
3必要に応じて、薬液吸入や生理食塩水による持続加湿を行う
4鼻吸引を行う
E-P
1児の理解できる言葉で説明。
2家族に治療の目的と効果を分かりやすく説明し、処置を行う際に協力を得る。
#2患児の活動制限
長期目標①安静度を守りながら年齢相応に活動できる
短期目標①不機嫌になる時間が減る
O-P
1食欲、経口摂取量、体重の変化
2患児の訴え、活気、機嫌、顔様、顔色、睡眠状況
3日中の過ごし方や遊びかた
T-P
1静かな環境を用意する
2児とコミュニケーションを図り信頼関係を築く
3遊びを患児・母親と一緒に行い、楽しい時間を過ごせるようにする
4処置、検査時は患児の発達段階に合った言葉で言葉をかけ、負担を軽減できるようにでいるだけ素早く行う
E-P
1家族に入院や処置・治療中に患児をサポートする方法を示す
2家族と、ベッド上でできるおもちゃと遊びの好みについて話し合う
#3母親の不安
長期目標①家族・母親の不安が減る
短期目標①患児の病態と治療内容について理解できる。②疾患への不安が軽減したと発言がある
O-P
1家族の言動表情
2現在の状態の受け止め方、疾病についての理解の程度
T-P
1家族の訴えを傾聴する
2家族が疲労しやすい状態を理解し声をかける
3処置、検査は目的、方法について説明をして納得を得てから実施する
4家族が訴えやすい雰囲気をつくる
5家族に対して遠慮なく質問して良いことを説明する
E-P
1パンフレットを用いて細気管支喘息について説明を行う
さいごに
予後
予後は極めて良好である。ほとんどの小児は続発症なく3~5日で回復するが,呼気性喘鳴(wheezing)および咳嗽が2~4週間続くこともある。
治療が適切であれば死亡率は0.1%未満である。小児期早期に細気管支炎に罹患した小児において,喘息の発生率の上昇が疑われているが,この関連については議論があり,発生率は児の年齢が高くなるにつれ低下するようである。
MSD Manual信頼できる医学情報
予後は比較的良好。だが中には0.1%の死亡率があることは知っておきたいとこ。
早産児、ダウン症、低出生体重児などの基礎疾患によっては、rsウイルスによる細気管支炎は命取り。医療者はそれを知っていて、注意深い観察と異変の察知が必要です。